大学教員という職業に就いた当初は、研究と教育という崇高な使命に胸を躍らせるものです。しかし、年月を重ねるにつれ、当初の情熱は徐々に冷め、虚しさを感じる瞬間が増えていくという人が非常に多いんですよね。
なぜ、多くの大学教員がむなしさを感じるようになってしまうのでしょうか。その理由を探るとともに、この状況を打開するための方策について考えてみたいと思います。
大学教員の置かれた現状 – 研究と教育のジレンマ
大学教員の本来の役割は、研究と教育のバランスを取ることです。しかし、現実には、そのバランスを保つことが非常に難しくなっています。
研究時間の確保が困難な中で感じる虚しさ
研究活動は、大学教員にとって生命線とも言えるものです。新たな知見を生み出し、学問の発展に寄与することが、大学教員の重要な使命の一つです。しかし、昨今の大学を取り巻く環境の変化により、研究時間の確保が困難になっています。
教育負担の増加、事務作業の増加、外部資金獲得のプレッシャーなど、研究以外の業務が増える一方で、研究に割ける時間は減る一方です。 自分の専門分野で十分な研究成果を出せないことへのもどかしさ、社会からの期待に応えられない無力感は、徐々に大学教員を蝕んでいきます。
「自分は研究者として失格なのではないか」 「この先、研究を続ける意味があるのだろうか」
研究者としてのアイデンティティが揺らぐ中で、虚しさを感じずにはいられません。
変化する学生との関わりに見る虚しさ
大学教員にとって、学生の成長を支援することは、もう一つの重要な役割です。しかし、近年の学生の多様化や価値観の変化により、教員と学生の関係性にも変化が生じています。
学習意欲の低下、コミュニケーション能力の欠如、人間関係構築の難しさなど、学生との距離感が広がる中で、教育者としての役割を十分に果たせているのか、自問自答する教員は少なくありません。
「自分の教えが学生に伝わっているのだろうか」 「学生の成長に本当に寄与できているのだろうか」
教育者としての手応えを感じられない日々の中で、虚しさが募っていきます。
長年培ってきた専門知識や経験が、学生に十分に伝えられない。 一生懸命準備した講義に、学生が興味を示してくれない。 熱心に指導しても、学生の成長が見られない。
こうした経験の積み重ねが、大学教員を徐々に疲弊させ、虚しさを感じさせているのです。
大学運営と教員の役割のギャップ
大学教員は、研究と教育以外にも、大学運営に関わる様々な役割を担っています。しかし、その役割の多様化と、本来の仕事とのギャップに、むなしさを感じる教員が増えています。
雑務に追われる日々と本来の仕事への虚しさ
大学教員の業務は、研究と教育だけではありません。事務作業、会議、学生対応など、様々な雑務に追われる毎日です。
書類作成、各種委員会への参加、入試業務、学生の進路相談など、これらの業務は大学運営には欠かせませんが、本来の研究や教育とは直接関係のないものが多いのが実情です。 中には、研究や教育よりも雑務に多くの時間を割かなければならない教員もいます。
「自分は研究者なのか、事務員なのか」 「本来やるべき仕事に集中できない」
雑務に追われる中で、自分の専門性を活かせない、本来の仕事に集中できないというもどかしさを感じる教員は少なくありません。 大学教員になった当初の志や情熱とは程遠い現実に、虚しさを感じずにはいられないのです。
大学教員に求められる能力の多様化
大学教員に求められる能力は、年々多様化しています。研究や教育だけでなく、社会貢献、国際交流、産学連携など、様々な分野での活躍が期待されているのです。
しかし、こうした多様な要求に応えることは、教員にとって大きな負担となっています。 専門外の分野での能力を求められ、自身の専門性を活かしきれない状況に、虚しさを感じる教員もいます。
「自分の専門性は社会から求められていないのではないか」 「大学教員としてのアイデンティティが揺らいでいる」
社会からの要求に応えようと努力すればするほど、本来の研究や教育から遠ざかっていく。 そんな現状に、大学教員は虚しさを感じずにはいられません。
社会から見た大学教員の評価と処遇
大学教員は、社会から高い期待を寄せられる存在です。しかし、その評価と処遇をめぐる課題は、教員のモチベーションに影響を与えています。
大学教員の社会的地位と評価の変化
かつて、大学教員は社会的に高い地位を与えられ、尊敬の対象とされていました。しかし、近年、大学教員の社会的評価は変化しつつあります。
大学の大衆化による教育の質の低下、研究不正の発覚による信頼の揺らぎ、社会との乖離に対する批判など、大学教員を取り巻く環境は厳しさを増しています。 こうした変化の中で、大学教員は自身の存在意義や社会的役割に疑問を抱くようになりました。
「自分の仕事は社会から正当に評価されているのだろうか」 「大学教員という職業の将来性はあるのだろうか」
社会からの期待に応えられない、評価されない現状に、虚しさを感じざるを得ないのです。 大学教員としてのプライドや誇りが揺らぐ中で、仕事へのモチベーションを維持することは容易ではありません。
待遇改善の必要性と展望 – 虚しさを乗り越えるために
大学教員のおかれた現状を改善し、虚しさを乗り越えるためには、待遇改善が不可欠です。
任期制の導入による雇用の不安定化、業績主義による過度な競争の助長、給与水準の低迷など、 大学教員の待遇をめぐる課題は山積みです。こうした待遇面での不安や不満が、教員のモチベーションを低下させ、虚しさを感じさせる要因となっています。
安定的な雇用の確保、業績評価の適正化、給与水準の改善など、待遇改善に向けた取り組みを進めることが急務です。 また、研究や教育に専念できる環境を整備し、大学教員が本来の使命を果たせるようサポートすることも重要でしょう。